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激指3vs柿木将棋7


1回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。激指の四間飛車に、柿木は左美濃に構える。
 ▲6六歩に、△4六歩から△6五歩としたのが機敏な仕掛けだった。▲2四歩からの反撃もお手伝いっぽく(△4五歩には▲同歩△同飛に普通に▲4六歩でよかった)、飛車が成れて激指が有利に。

 だが、ここからの柿木がしぶとい。
 まず▲6八銀と角筋を通し、△4七歩成には▲5九金で△5八とを防ぐ。続けて飛車を切って▲3三角成と馬を作り、間接的に△6六歩を防ぐ(△6六歩は▲同金△同銀▲同馬が3九の龍に当たる)。激指は△2九龍とそれを避けたが、▲6四桂で一枚はがしてから▲6六香として目障りな銀を消去。▲6六同馬と引き付け、あっという間に堅陣を築き上げた。
 ここでは△7四桂と、一番「光っている」馬に働きかけるのが筋というものだろう。しかし、優勢と考えている激指は△1九龍と取ってのんびりしている。結果論になるが、この辺りの大局観が本局の勝敗を分けた。

 柿木の▲7二角成から▲5二銀が実戦的な勝負手だった。
 激指は持駒が悪く、うまい受けがない。△6一香と打てば受け切れているとは思うのだが、▲6三銀成△同香▲6五歩と辛抱して、▲4四馬などを狙えば勝負にはなっている。
 本譜は△6二金と危機感のない受けだったので、▲6一銀打から▲6三歩という手がまともに決まってしまった。

 この時の激指の評価の揺れは興味深い。
 △6二金の時点、そしてそこから数手は-800で激指有利だった。ところが▲6三歩の局面で互角になり、▲6二歩成の局面では1200とひっくり返った。
 どうも激指は、こういう筋悪のダンゴ攻めに対して弱いようだ。人間の有段者はこの辺の速度計算はきっちりとするので、このような展開に出くわすと「コンピュータ弱ぇじゃん」という感想を持ってしまうのだろう。


2回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。角換わり腰掛け銀に。
 激指はガチガチに玉を囲ってから△6五歩。その後も端を突き越すなど、カウンターの構えだ。

 柿木は桂交換をしてから馬を作ったが、△6四桂、△8五桂、△4四角と激指の駒がダイレクトに玉に集中しだした。こうなると9筋を詰めた手は手待ちではなく立派な「攻める手」となる。柿木は▲7九玉と逃げ出すしかなく、まずは激指が一本取った。
 △6六歩に柿木は手抜きで▲5八金だが、ここは苦しくても▲同歩と取っておきたかったのではないか。激指玉は鉄壁なので、勝つとしたらもう受け切りしかない。▲6六同歩と取り、△同角に▲6七金で勝負するしかなかったのではないか。▲6七金のところで▲4九桂くらいの受けだと、△8八銀▲同金△同桂成▲同玉△7六歩で寄ってしまう。▲6七金は7六の地点を受けつつ、△8八銀に対して▲7八玉の余地を残した手だ。もっとも、それでも冷静に△4四角くらいで苦しいのだが……。
 銀を割り打ってから△5五角と一つ出たのがうまい手で、一方▲4九桂△4六角▲3七銀と受けた手がまずく、ここで勝負がついた。バッサリ△3七同角と切って落として△8八銀で寄っている。このクラスのソフトだと、この程度の寄せは逃さない。
 逆に、受ける側からすると、▲4九桂のときに「▲3七銀と先手を取って受けられるからなんとかなる」と思っていても、▲3七銀に△同角成▲同桂△8八銀▲同金△6八金▲8九玉△8八桂成▲同玉△7八金打▲9八玉△5八金とここまで読まないと寄りが見えない。手数打ち切りがまずい方に出てしまったのか、それとも単に読めなかっただけなのか。王手を無条件延長の条件とすると、実際の手数よりはかなり短くなるのだが……。


3回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。中飛車に振った柿木に対し、激指は1筋の端歩を突き越しつつ2二玉型左美濃に。一方の柿木も▲3六歩を突いてから▲4六歩と突くなど、若干妙な駒組みながら、がっぷり四つに固め合った。
 戦端を開いたのは柿木だった。△6二飛に、スキありと見てか▲7五歩と突き捨ててから▲5五歩。△5五同歩では十字飛車が見えているので当然の△6五歩。以下、互いに一歩も引かず、あっという間に飛角交換になった。
 △7七とと角を取った瞬間が、柿木にとってはチャンスだったと思う。
 ここは▲5五桂と攻め合ってみたい。△6八とも大きな手なのだが、例えば▲5五桂なら△6八と▲4三桂成△5九と▲3二成桂△同金▲5九金と後手玉を薄くできる。本譜は▲7七同桂とと金を払ったのだが、△6八銀とされて後手の方が一手早くなってしまった。
 対する激指は堅実そのもの。△5八歩から飛車を押さえ込んで△5五角成、△5四馬としっかりと厚みを築いた。激指に限らず、コンピュータは玉の固さは判断しやすいので、こういう手は指しやすいのだろう。

 柿木の▲9二龍が敗着となった。
 ここは▲5二銀と攻める一手だろう。先まで読まないと具体的な有利にはできないだろうが、人間ならこの喰いつきはひと目だ。少なくとも、▲9二龍として虎の子のと金を取らせる指し方は絶対にしない。
 ちなみに、激指の検討モードでは▲5二銀は一発で出る。ただし以下△5三金▲5一銀不成△同角までで止まって「後手有利(-546)」となる。まずいだろーよそれは▲5三龍でよ。もっとも、▲5二銀のところで調べるとちゃんと△5六桂から攻め合うのだが、だとしてもちょっと問題だと思う。しかも、▲5二銀以外は「▲5六銀△6六馬」「▲5七銀△5三角」「▲5六桂△5三角」しか表示されないし。


4回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。角を換えない腰掛け銀に。
 ▲5五銀とぶつけて戦いになったが、△1三角がうまいのぞき。玉も広くなるし、▲4七金とさせればそれだけで利かしになる。
 それを嫌った柿木が▲7四歩と攻め、飛角交換から▲6一飛と打ち込んだところでは柿木有利に見えた。しかし、▲6四飛成に△4六角と、さっきの△1三角がピッタリになる展開に。あぁ、これは激指もまだまだやれるかな……と思っていたら、その瞬間▲4三歩。激イタ。
 △4三同金の一手に▲2三飛成と成り込んで、これは柿木の勝ちかな……と思っていたら、△5六桂と捨ててから△5二金。これがしぶとい受けだった。例えば▲4二歩△同金▲5一銀のしばりは△2四角で逆転する。コビンに風穴を開けておくのがうまい工夫だったのだ。
 それに惑わされたわけでもないのだろうが、柿木は▲3三桂。激指はするりと△3二玉で、ここで勝負は終わった。△5六桂でアナを開けていた効果で▲2四○といった押さえが一切利かない。
 以下、入玉を決めて激指の勝利。


5回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。相矢倉となった。
 柿木はなかなか▲3六歩を突かないし、激指はなかなか△5四歩と突かないし、なんだかぎこちない序盤戦だ。しかも、スズメ刺しの激指に対して森下システムに組む柿木(<をい……)。しかし、そこはコンピュータの悲しさ、激指はそれを咎めることなく手損を交えつつゆっくりと入城するし、柿木はのんきに相スズメ刺しにしている(笑)
 桂香を持ち合ったところでは激指がやや不利だと思うのだが、△6四歩に柿木が応接を誤った。▲6六銀とか▲6六金と盛り上がって置けばよかったのだが、▲6四同歩と取ったものだからすかさず△6五桂が飛んできた。角銀両取りでこれは形勢逆転である。まぁ、これはこういう攻めをひねり出した激指を素直に誉めるべきだろう。
 優勢になってからの激指は早かった。飛車をたぎって△7六歩のくさびを入れると、△5九角△4八角打と重ね打ち。自陣が鉄壁なのでやりたい放題だ。激指の快勝だと思う。


6回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。激指の三間飛車に柿木の居飛車穴熊。
 柿木の居飛車穴熊は非常にうまく、過去の激指2レビューの際は2戦して柿木の2勝。バージョンアップした激指はどう戦うか。

 △1二飛ってなんだよ……(怒)

 十分の形に組まれ、そのまま開戦。

 中盤の数手を見て思ったのだが、どうも激指は「平凡な受けの手」をあまり評価しない傾向にあるようだ。
 例えば、▲6七金と上がった局面。激指は△6四金を指しているが、そのあとの手順を▲6六銀と読み後手有利としている。実際は柿木が▲2四歩と攻め、その時点で初めて先手有利に針が振れた。
 その他にも、▲6六歩、▲5六銀といった平凡な受けの手をあまり高く評価していない。それよりも派手に攻める手を指す傾向にあるようだ。より攻撃的になったと言えるのかもしれないが、暴れて通用するのは3段くらいまで。そこから上の人には、かえってコンピュータが弱くなったと映るのではないだろうか。
 将棋の方は、龍とと金でじっくり攻めた柿木の勝ちとなった。
 激指、柿木居飛車穴熊にいまだ勝てず。


7回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。激指の5筋位取り中飛車に柿木は再び居飛車穴熊へ。
 激指は△7二金としてから△5二金、△6三金左となんだか矢倉っぽい囲いへ。最終的には2歩を持って6四銀と綺麗な形に組み替えた。

 先に攻めたのは柿木。▲2四歩と突き捨ててから▲6五歩と角交換を挑む。
 ここからの激指は強かった。
 ▲4二角に手抜きで△6六歩と急所に歩を入れ、続けて△3九角から△7六銀▲同金△6七歩成とと金を作る。更に△5七角成から△7九馬▲同銀△6八歩と2枚目のと金作りを目指す。堅陣を頼りにした豪快な攻め手順だ。
 柿木も金を犠牲に▲5五角から▲7七角とと金を払うが、激指は崩れない。△4三金などもコンピュータらしい激辛流の一手である。角を犠牲に▲7二とと取ったあたりでは「もしや」という気もしたのだが、逆転はしなかった。
 激指、念願の対柿木居飛車穴熊初勝利。


8回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。相矢倉に。
 柿木の方は無難な駒組だと思うのだが、激指側は△7四歩も突かずに9筋は突き越すし△7二飛と回るし、なにかぎこちない感じがある。140万手の定跡は本当に役に立っているのだろうか?
 ▲3五角と歩交換した手に△5三銀としたのが「強情な一手」で、▲4五桂から華々しい駒の取り合いとなった。▲6一銀と割り打って金銀交換をして、最終的には飛桂と金金の駒割り。相居飛車では一般的に飛車を持った方が有利だが、玉の固さと手番を考えると、互角と考えるのが妥当だろうか。
 ここでの、両者の形勢判断が面白い。
 激指の候補手は▲3四金。▲2四歩の突き捨て、▲3三歩の叩きを入れるか入れないかは随分悩んでいたようだが(最善手がコロコロ変わった)、最終的には単に打って形勢互角(-11でほんの少し激指有利)、という読みだ。
 一方、本譜の柿木の指し手は▲6一角。以下△6二飛▲5二金△6一飛▲同金と、有段者が見たら頭を抱えてしまうようなイモ攻めだ。激指は▲6一同金の局面を-900ほどで後手優勢と断じた。人間の大局観・形勢判断も、そちらに近いものだろう。このあたりの判断が勝敗を分けた。
 ▲4五桂、▲3四桂と迫ったものの、残念ながら一枚足りない。最後は△8八金としばって激指が決めた。


9回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。柿木得意の居飛車穴熊に、激指は3二銀型向かい飛車。
 この形は、2002年8月の王位戦第5局、羽生王位vs谷川9段戦で登場した。ただし、王位戦は振り飛車側が端歩を突き越しているため、居飛車穴熊側は5六歩・5七銀・5八金の形になっていて、▲9八香の瞬間に△2四歩と仕掛けている。
 本譜では▲9九玉のタイミングで△2四歩▲同歩△同飛の仕掛け。柿木は▲同飛と強く応じ、△同角に▲2八飛と自陣飛車を打つ。△2三歩なら▲4四角と飛び出して柿木が指せそうだ。
 これに対する激指の指し方が細かかった。
 まず△2二飛と打つ。▲4四角なら△3三角▲2二飛成△4四角が王手の先手。3二銀型のハメ手筋だが、さすがにそれには引っかからず柿木は▲8八銀。そこで△3三角と引き、▲2二飛成△同角▲2六飛△2三歩となった。先手の▲8八銀も大きな手だが、▲4四角をうまく消した。飛車も手持ちだし、ここでは激指がうまく立ち回ったと思う。
 ここからの手損はよく判らないが、これは激指の混乱かもしれないし、わざと手損をして陣形を上ずらせる意図かもしれない。のちに△5二金左から△6三金としているところをみると、単なる手待ちのような気がするが……(笑)。
 しかし、結果的に柿木の伸び過ぎを捉えて△5四歩から戦いに。△6五金△7六金が形にとらわれない力強い手順だった。△6五飛と打てては激指優勢だろう。

 ところが、ここでまた激指に不可解な一手が。
 ▲5六歩に△6七飛成と成るのかと思いきや、駒得に目がくらんだか△5四歩と角を殺しに行ってしまった。そのため、▲6六歩から角金交換して▲4二金という穴熊流の食いつきを喰らってしまう。これはもう形勢不明である。
 柿木のここからの手順は必見だ。角を追ってからがっちりと▲5七銀。△6七飛成にも▲6八金右▲7七桂▲6七桂と執拗に龍を追いまわして封じ込め、それからおもむろに▲2五桂から▲3三桂成。合間に一発▲6二歩を利かしているのがうまくて、△同銀は▲3一龍が先手になるためにこの桂を取れない。
 このあとの▲8四香からの寄せも鋭く、柿木の快勝となった。やはり柿木の居飛車穴熊は強かった。


10回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 柿木が先手。角換わりかと思われたが、激指が△4四歩と拒否し、矢倉vs雁木に。
 6筋を突かずに▲6六銀と上がったのがうまかった。激指側はうまい攻めの陣形を作ることができない。本譜のように△6五桂と跳ねても先の狙いがないし、△6五歩は桂が使えなくなる。
 はじめは定跡に登録されていたのかと思ったが、数手後に▲5五歩と突いたところをみると違ったようだ。しかしこれは本譜の△3三角が厳しいのでは……と見ていると、▲5六歩▲6六歩でしっかり受け切ってしまった。
 △5七桂成に▲8八玉としたので駒損にはなったが、▲7七金と受けておいて問題はない。▲3四歩▲4四歩▲4三桂という分厚い攻めが決まって柿木の圧勝となった。

 少し気になることがあった。
 終盤、柿木はベッタリと▲4一金と打ち、▲3一銀△3二玉▲4四歩△4一玉▲4三歩成という寄せを見せたのだが、激指にはこの一連の手順が読めていないのだ。
 解析モードで実行すると、▲3一銀の局面で▲4四歩▲7八玉▲4四銀打という候補を上げ、それ以外の候補を上げない(白砂は候補手を4つ表示させている)。▲3一銀と打った局面でも△3二玉に▲4二歩で先手優勢と出る。▲3二玉の局面になってやっと▲4四歩という手が登場するが、この手が最善手と判断されるのは30秒近くたってからだ。
 こういう状態なので、局後のグラフと読みでは、▲3一銀は疑問手と表示される。やはりというか、こういうもっさい攻めを読むのは苦手なようだ。


11回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 ここからは激指が先手。相掛かりから、△6四歩を見て激指が▲2四歩と合わせていった。
 なんと▲7五角までが激指の定跡で、このあと激指定跡では△8六歩となっている。
 しかし柿木の指し手は△2八歩。▲1七桂と跳ばせて△1五歩と攻める狙いだろうが、▲8四飛と飛車交換をしてみると△1六歩より▲8二飛の方が数段厳しい。
 柿木は△8八角成から△7二銀と懸命の防戦だが、逆を攻める▲1二歩から▲2一角がまた厳しかった。以下、長くはなるが一方的に攻めつける展開で激指快勝。


12回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。▲7六歩△8四歩▲5六歩△8五歩▲7七角△5四歩に▲7八飛という序盤。悪い手ではないんだろうけど、こういう手もあるんだなぁ。対する柿木は定番の居飛車穴熊。
 先に攻めたのは激指。4五の位をとったあと、▲8六歩△同歩▲同飛でシンプルな飛車交換に。相手は居飛車穴熊だが、一応激指玉も金銀4枚で守っていること、4五の位があるので4四からのぶち込み攻めがあることなどから行けると踏んだのだろう。対する柿木も、△8八飛▲8二飛の打ち合いは桂香を拾って▲4四○という展開になるので、それを嫌って△8四飛の自陣飛車を打つ。しかし、この展開は激指がいいだろう。
 柿木の△5二金に激指はスキありとみて▲4一飛。しかし、本譜の△5一銀で受かっているようだ。
 激指3は、こういう部分でかなり「踏み込む」ようになったと思う。6回戦でも同様のことがあったが、微妙な問題である。まぁ、3では棋風チューニングもできるので、そこらへんはユーザーの腕一つにかかっているのかもしれない。

 将棋の方は、▲1五歩に△6四歩と受けたのが弱気で激指が一気によくなった。ここは△1五同歩で十分だったと思うし、角筋が怖ければ穴熊らしくバッサリ△8六飛▲同歩△4二金引でよかった。
 しかしここから柿木が粘る。△1四歩と香を取りたいところを、辛抱して△3三金と形を整える。▲1三歩の叩きにも手に乗って△同桂から△2五桂と跳ね出し、▲1四歩に△1七歩▲同香△1六桂と逆襲。攻め間違えればいっぺんに逆転である。

 激指は綺麗に寄せた。
 ▲2五桂から清算して▲1四歩と手がかりを残し、△2二玉(△同金、△同玉それぞれ難しい)に桂を取って▲1五桂。△3三金とかわす一手に豪快に▲1一角とぶちこんで、以下手数はかかったが全く危なげなかった。
 寄せの強さを見せつけ、再び柿木居飛車穴熊に快勝。


13回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。激指の四間飛車に柿木の居飛車穴熊。
 激指の▲4五歩に△8六歩と突っ張った(△2二銀▲4四歩△同角▲同角△同銀くらいが妥当な進行か)ものだから、ものすごい戦いに突入した。△7八との瞬間に飛ばした▲4二歩が大きく、▲4一金と俗に迫ったあたりでは激指がやや指せていると思う。

 形勢がおかしくなってきたのは△8七角あたりから。
 ここでは▲4三とではっきり一手勝ちだった。△6九とには▲3二銀として、△5九とに▲2一銀成△同玉▲3二金△1一玉▲3三桂だ。△同銀は▲同と△同馬▲同金△2一香▲4四角だし、△1三香も2二でばらして▲4四角△1二玉▲3二とだ。次の△6七香の時も、▲同金△同馬▲4三ととすれば同様の変化になる。
 これを逃して△3三金と埋められ、△3五歩から△3六歩と桂頭を攻められたところでは、既にいや〜な空気が流れはじめている。もちろん、本譜のように攻め合っても激指が勝っているはずだが、△3三馬、△4五銀などの王手のかからない穴熊を生かした気持ち悪い手が連発。人間だったらこの辺で「心が折れて(by.森川ジョージ)」いるところだ。
 はっきりと逆転したのは△3八香成に▲1八玉。ここでは▲4三金と攻め合って勝ちだった。▲1八玉に△2四飛と浮いたのが素晴らしい一手で、これで逆転している。▲4四歩は△3六銀。▲3四銀は△同銀▲同歩△2六桂。本譜の▲4二銀打も、△2六桂でやはり後手が勝ちだ。
 激指は△2六桂と打たれて事の重大さに気づいたようだが時すでに遅し。▲2七飛まで必死の防戦だが、残念ながら再逆転はならなかった。


14回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。激指の位取り中飛車に柿木は△7三銀から急戦。
 中央の薄みを突いて▲4五銀から▲5四歩が鋭い。△同歩▲同銀は中央がもたないので△6四銀はこの一手だが、▲5三歩成△同金▲6六歩が手筋ながら好手。次に▲6五歩(△同銀は▲5三飛成)を狙っている。まずは激指が一本取った。

 しかし柿木の△7五歩から△4二銀もしぶとい。なんとか角を働かせようとする意思を感じる。激指は▲4八角、▲7九金と必死の防戦だが、△7六歩までとなってみると逆転されているかもしれない。
 再び混戦となったのは△1三角から。ここは素直に△8八歩成▲同金△7七歩成▲同金△8九飛成で柿木有利だったと思う。
 △1三角も確かに味のいい一手なのだが、▲5八飛から▲6五歩がうまい切り返しだった。△7八とでと金は働くし△8八飛成と龍もできるしといいことずくめのようなのに、▲5二銀と打ち込んだ局面は意外なほどに難しい。△6八とは▲4一銀不成△同金▲5四飛だ。
 それくらいで互角という気もするが、本譜は△3一金打と弱気に受けたために▲6六角で決まってしまった。
 以下は長いが、玉の安全度が違うのでこのクラスなら逆転はありえない。


15回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。相矢倉に。
 綺麗な総矢倉に組み上げる激指に対し、早めに角を転換し受けに徹する構えの柿木。駒を組み替えたりと長い序盤戦だったが、▲5五歩でやっと駒がぶつかった。
 香を交換し、あとはどちらが有効に使うかだが、柿木は早速△3五歩から攻める。▲3五同歩は△3六香で△3八香成が残るから取りづらい。ということで▲3九飛と回ったが、△3四香から△3五銀とぶつけていったのが厚い攻めだった。▲4六角と飛び出した手にも△4八銀から△3七歩成でと金を作る。いわゆる「攻め駒が攻められる」形で、これは柿木が有利になったと思った。
 ところが、実際は違ったようだ。
 ▲3三歩から▲1三桂成が気づきにくい攻め。△同玉は▲1四歩から清算して▲3五角と取り、▲1九飛と回る手が生じる。
 柿木は仕方なく△3一玉と逃げたが、悠然と▲3五角と取り、△3八とにも▲2七飛と柳に風で好調だ。

 決まったと思った局面だが、ここで柿木が粘る。
 △3四香から△3五歩でまず角筋を止め、続いて△4一玉から△5二玉と一目散に逃げ出す。▲3一歩成に△5一角と先に逃げておいたのもうまい手で、この局面、有利ではあるのだが意外と難しい。この瞬間、激指側の飛角がほとんど働いていないので、早い攻めがないのだ。
 激指は▲2二成桂から▲2三成桂と活用する手を選択したが、△6九銀から△9六歩▲同歩△9七歩としたのがうまい反撃筋だった。
 ▲9七同桂は△9六飛▲9八歩△1六歩▲同飛△4七とと、と金を活用する筋がある。△5八とと更に入られると厳しいし、かといって▲7九金は△5八銀不成▲7八金△6七銀成▲同金△5七と▲同金△同銀成▲同角△6七金▲6八金△5七金▲同金△4五桂といった攻めがある。
 必ずこう進むとは限らないが、▲9七同桂の形を「味が悪い」と判断したのだろう、激指は▲9九香と受けた。玉も安定したように見えたのだろうが、これが大悪手。△9八香と打たれていっぺんに形勢不明になってしまった。
 激指は▲4一とと捨ててから(そういえば激指はこういう手が目立つ。意味があるのだろうか?)▲7九金としたが、△5八銀不成で筋に入っている。△5六銀成としたところでは完全に逆転だろう。
 このあと激指も頑張ったのだが、△3一香の軽手や△2七とと捨てて△4五桂などといった気持ちのいい手が頻出。残念ながら再逆転はできなかった。


16回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。柿木のツノ銀中飛車に激指は8八玉型左美濃。
 5筋の位を取り、飛車を回って▲4六角までとなってみるとやけに激指陣の形がいい。△6一飛に▲6四銀から▲5三飛成の強襲がまともに決まって、早くも激指が一本取った。△5五銀にも▲1六歩から角を生かして△4三龍と取り、これで銀桂交換の駒得。▲5四歩からの垂れ歩攻めもあるし(こういうのが遅いようで早いものなのだ)、ここでは激指がややリードしていると思う。
 その展開はまずいので、柿木は△6五歩▲同歩に△6六歩と攻め合いを選択した。しかし▲8六角が飛車に当たってしまうのが痛いところで、△7八金と取るしかないのでは辛い。もし▲8六角が先手にならないのであれば、そもそも△6七金で△6六歩と攻めるところだ。
 △6九飛成に先手は待望の▲4一龍。銀冠を攻略するには、龍が三段目にいては話にならない。
 ここが問題の局面だった。

 本譜は△7八龍から△4五馬と攻めたのだが、飛車を渡した反動が大きかった。この展開は先手の勝ちだろう。
 ここでは△7一銀としっかり埋めておく手が最善だろう。
 平凡な▲6八金打や▲7九金打は、△1九龍で次の△6四桂や△6六桂を見て難しい。また、▲5九金と打つのはそこで△7八竜▲同玉△4五馬とすれば、今度は▲6七歩には△6六歩とゆっくり攻めることができる。▲8八玉とかわすのが最善だろうが、△7八金▲9八玉(▲9七玉は△8五桂▲9六玉△9四歩で後手優勢)△8五桂で難しい。次に△9六桂や△8九金から△7八馬などの狙いがある。
 こうなればまだまだ勝負は判らなかったと思う。


17回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。横歩取り△2五角戦法。
 ▲3六飛と引く形の方で、▲3二飛成の方よりは手将棋感が強いが、どちらにしても定跡がかなり進んでいる形だ。白砂だったらコンピュータ相手に指したくはない(笑)。
 じっくりとした駒組みだったが、△5一金に▲8三角打が気づきにくい一手。これで激指が有利になった。このあとも伸ばした2六歩をタダ取りしてしまうなど絶好調で、柿木は暴れるよりなくなってしまった。
 最後はじっくりと自陣を整えてから▲3二飛の豪打一発。こういうことがあるから横歩取りは怖い。


18回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。今度は相掛かりになった。
 激指がいきなり▲4五桂と跳ね、序盤から緊迫した空気に。
 柿木はそれを咎めるべく△4四歩。▲同角に△4三金▲6六角△4四歩と桂を殺す手があり、これは後手が有利になる。しかし柿木は▲6六角に△6三銀と△4四歩を保留し、△5四銀△6五銀△7六銀と角をいじめる手を選んだ。確かに、この方がよりいいかもしれない。桂はいつでも殺せるし、本譜に現れるように△3四歩と角を活用する方がより本筋だ。
 結局激指は▲5三桂成から自爆するよりなく、大駒4枚を持った柿木が物量攻めで押し切った。


19回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。柿木の石田流穴熊に激指は銀冠で対抗。
 △4五桂から△3七桂成と飛び込んで、柿木が攻めの糸口をつかむ。△1五角から△3七歩成も堅実な攻めで、△3七角成と香損ながら龍と馬ができた。▲5七馬と固めた手にも△1九馬から飛角交換して△1八飛と二枚飛車を実現。振り飛車党ならずとも、柿木有利を主張するところだろう。
 しかし、じっと▲3一角と打たれてみると、具体的に有利にする手順が浮かびにくい。△3八飛成▲4二角成△3一歩▲同馬△4三銀▲5三馬△3四銀とでもしておくのが無難だと思うのだが、それにしても攻め手がない。激指陣も金銀4枚に馬まで張り付いている堅陣なので、一筋縄では行かないのだ。
 柿木が選んだのは△2一銀だった。しかしこれでは▲3三歩成で逆転である。その後の指し手も右往左往しているようで、明快な狙い筋がない。
 コンピュータチェスでも言われていたことだが、こういう「ぼんやりした局面」での弱さはどうにも克服しようがない。柿木にとっては不運だったし、激指にしてみれば辛抱した木に花が咲いたといったところだろうか。
 ▲7五歩▲7四歩と桂を取って▲6四桂と打てては完全に逆転である。穴熊もこうやって手がつきはじめるとモロい。手数こそ長いが、間違えようのない一本道だ。


20回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指が先手。20番勝負のラストは相矢倉になった。
 矢倉での△6四歩△6三銀は柿木の定跡のようなものなのだろうが、せっかく出た銀を戻ったりとなにかぎこちない。一方の激指は3筋の歩を交換して玉を入城と実にスムーズな駒組み。序盤だけをみると激指の方がかなり強く見える。
 △7五歩からの歩交換に▲7六銀から▲8五銀というのも頑張った手で、ここまでしなくても陣形の差で有利だとは思うのだが、これも棋風だろうからとやかく言う筋のものではない。現実の歩得は大きいし、実際に暴れる柿木をしっかりと押さえ込んだ。△8六歩に▲7七金寄で完全に切れ筋である。
 柿木も頑張っては見るのだが、激指は全く動じない。玉頭の歩を払うとその開いた空間に得した金を埋めるなど万全の大勢だ。飛車は取られたものの上部は広いのでちっとも痛くない。
 最終戦は、激指が強さを見せつける形で勝ち切った。



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